「人間を生け捕る漁師」
(マタイによる福音書4章12~23節)
イエスがユダヤのガリラヤ地方で伝道を始めた時、ガリラヤ湖のほとりで生活をしていた四人の漁師を最初に弟子としました。二組の兄弟であるペテロとアンデレ、ヤコブとヨハネです。2000年前の当時のユダヤの漁師たちは、自分たちの獲った魚を受け取る元締めや雇い主と強い関係を持っていました。彼ら漁師たちは貧しく、元締めや雇い主を自分たちの主人とし、その主人から自分たちは網や舟を与えられ、その仕事に従事し、そして獲れた魚は自分たちの主人に渡すことにより、主人から庇護、保護され、自分たちの生活が保証されていました。
その漁師たちである、ペテロとアンデレ、ヤコブとヨハネを、イエスは呼びます。「わたしについて来なさい」と。呼ばれた彼らはすぐにイエスに従いました。この出来事が示すはっきりといえる一つのことは、漁師であった彼らは、生きていくための大切な自分たちの主人を、イエスとした、ということです。イエスは、漁師の元締めや雇い主のように、ペテロたちに網や舟、漁具は与えません。しかし、「人間をとる漁師」という生涯を与えたのです。本日の聖書の箇所の、「人間をとる漁師にしよう」というイエスの言葉の原文は、聖書本文のギリシャ語で「人間の漁師にしよう」となっています。本日の聖書の箇所は、マタイ伝ですが、ルカ伝の同じ場面の記述の原文では、「人間を生け捕る漁師にしよう」と具体的に記されています。漁師たちは網で魚を獲り、舟の上で息絶えたその魚を、自分たちの生活のために、自分たちの主人に渡します。しかしペテロたちのこれからの新しい生き方は、人間を福音という網ですくい、ますます人間に命を与え、イエスという主人に向かわせていくのです。