希望の旅路
(マタイによる福音書2章13~15、19~23節)
本日のマタイによる福音書には、生まれた幼子イエスとその家族が、ヘロデ王の殺害計画から逃れてエジプトへ行き、そのエジプトからユダヤのナザレに移って住んだことが記されています。この出来事は、かつて神の救いの約束を人々へ与えたモーセの生涯を思い起こします。モーセもイエスと同じヘブライ人として生まれましたが、誕生の時に王から布告されていた幼子に対する殺害計画を逃れて数奇な運命をたどり、そしていつしか同胞のヘブライ人を救うためにエジプトからユダヤの地へ導く大指導者となりました。モーセは、エジプトからユダヤの地へ民を導く間、神より救いの約束である律法を授かり、それを民に与えます。この律法がかつて神と人とが交わした救いの約束であり、旧約といわれます。しかし民は、この約束をないがしろにしていきました。
出生時の危機を乗り越え、神のご計画のうちに人々に救いの約束をもたらし、エジプトからユダヤの地へ向かったモーセ。実はこのモーセの姿は、生まれた幼子イエスの姿と同じです。神は幼子イエスとその家族に、モーセと同じ道を歩ませました。それは、かつてモーセが神より授かり人々に与えた律法という約束では成しとげられなかった「救い」を、もう一度新たにイエスによって成しとげさせようという、神のご計画の現われです。イエスは、神と人とが交わす新しい救いの約束(新約)を実現するために、この世界に生まれました。
私たちはこの世界に生まれた救い主、幼子イエスを迎え祝う降誕節を歩んでいます。幼子イエスと家族は、この世界に救いを実現するという神のご計画のうちに、エジプトからユダヤの地に入りました。私たちも、幼子イエスとその家族と共に、神の救いという希望に向かって入っていくのです。これがクリスマスによって始まった私たちの希望の旅路です。