一人一人のために
(ヨハネによる福音書10章11~16節)
「わたしは良い羊飼いである。良い羊飼いは羊のために命を捨てる。」これが今日の福音書に記されている、イエス・キリストのメッセージです。聖書に記されている世界は、中東、オリエント地域が舞台ですが、そこでは古来より、羊は大切な財産の代表格であり、財産の象徴でもありました。その羊の世話を任されている羊飼いは、大変な責任と使命感をもっていました。ですから羊飼いと羊の「確かな、強い絆で結ばれた関係」は、古来より、神と人間との「愛の関係」にたとえられてきました。
羊はその一匹一匹が、非常に弱い動物で、羊は群れで行動しようとする習性をもっています。しかしまた、その羊の群れは、羊飼いという飼育者によって導かれ、保護されなければ、生存していくことはできません。羊飼いのいない羊の群れは、野獣に襲われるがままになったり、またやがては一匹一匹がばらばらに迷い散らばって、いつしかその群れは死滅していきます。また、羊は身をおいているその状況に、あまりにも無防備であり、従順でありすぎます。羊は、屠殺場へ連れて行かれる時、他の家畜に比べて、なされるがままに非常に従順に引かれていくとのことです。
それほど弱い羊。一匹一匹の羊たち。しかしイエス・キリストは、「わたしは良い羊飼いである。良い羊飼いは羊のために命を捨てる。」と言います。弱く、迷いやすい私たち。守られ、支えられ、導かれなければ、しっかりと生きていくことのできない一人一人の私たち。この私たちのために、イエス・キリストは、自らの命をささげて下さったのです。私たちが、今日も、希望と喜びをもって生きていくために。