キリスト教教会 目白聖公会の公式ホームページです。
Anglican-Episcopal Church, Tokyo Japan

「わたしたちが置いておけないもの」
（マルコによる福音書10:17-31）
　きょうの聖書箇所は「金持ちの男」という小見出しがついています。ここで登場する金持ちの男はイエスに「善い先生、永遠の命を受け継ぐには、何をすればよいでしょうか。」と尋ねます。そこで、イエスは彼に十戒を彼が知っているはずであることを確認します。そして、彼は、十戒を子どもの頃から守ってきたことをイエスに言いました。
　十戒という律法に忠実に生きてきたこの男は、多くの財産を築くまでになりました。それを彼は自分の努力で築き上げたという自負があったのでしょう。イエスに「あなたに欠けているものが一つある。行って持っている物を売り払い、貧しい人々に与えなさい。そうすれば、天に宝を積むことになる。それから、私に従いなさい。」と言われたとき、彼は、顔を曇らせて、悩みつつ立ち去りました。
　彼が財産の次に関心を持ったものが「永遠の命」でした。彼は永遠の命を得ることで、さらに自分の財産を増やそうと考えたのかもしれません。この金持ちの男が手放せなかったものは自分の財産でした。イエスは金持ちの男とのやり取りの後、弟子たちのところへ行き、財産のある者が神の国に入ることが難しいということを伝えます。
　すると、ペトロは「このとおり、私たちは何もかも捨てて、あなたに従って参りました」とイエスに言います。そして、イエスは家族、資産を持っている者がそれらを捨てたとき、この世では迫害を受けるが、次の世では永遠の命が約束されていることを伝えます。ペトロは何もかも捨てたとイエスに言いますが、実際に手放せなかったものがありました。それは自分の命でした。ペトロはイエスが力ある者たちによって捕らえられたとき、保身のため逃げてしまいました。
　わたしたちもまた自分の命を置いておくことができません。これは究極すぎてしまいますが、その他にも置いておけないものがあるはずです。そのことに目を逸らさずに目を向けたいところです。そして、それらを手放したとき、わたしたちは「神の国」に入り、「永遠の命」を受けられるのでしょう。
（執事ウイリアムズ藤田　誠）