「あなたはメシア、生ける神の子です」
(マタイによる福音書16:13-20)
ガリラヤでさまざまな病いや悩みにある者を癒し、五千人以上の人々に食べ物を与えて満腹にさせて、天の国(神の国)のたとえを群衆に話すこのイエスという人は誰なのか?
弟子たちやイエスの周りにいた多くの人がこの問いを持ち続けていたと思います。今回、私たちに与えられた福音書の箇所において弟子たちは「洗礼者ヨハネだと言う人、エリヤだと言う人、ほかに、エレミヤだとか、預言者の一人だと言う人もいます。」と答えます。エレミヤと洗礼者ヨハネは終末(この世の終わりと新たな始まり)を説く預言者と思われていました。そして、エリヤは終末のときに再び現れる預言者と思われていました。人々はイエスのことを彼らと同じように終末のときに現れる預言者と思っていたのかもしれません。かつて、預言者モーセはイスラエルの民をエジプトから導き出しました。イエスをモーセのような指導者と思ったのかもしれません。さらにエレミヤと洗礼者ヨハネに注視するとき、アッシリア制圧下で預言活動をしたエレミヤ、ヘロデ王体制下で活動した洗礼者ヨハネはそれぞれ、神がイスラエルを支配して抑圧する者を取り除いて新たな局面へ導くと預言しました。その局面に現れる「人の子」と呼ばれるメシア(救済者)のことをイエスだと思ったのかもしれません。
さまざまな想像ができるわけですが、ここで、シモン・ペトロはイエスのことを「あなたはメシア、生ける神の子です」とイエスに答えます。ペトロのこの答えは、いま、教会に集う会衆がイエスに答えるときの大きな助けとなります。イエス・キリストは時空を超えて、今を生きる人々の魂を救済する生きる神の子です。このことに私たちが気が付いた時、それは私たちにとって大きな恵みなのだと思います。
(執事ウイリアムズ藤田 誠)