「拠り所」を示す悪魔
(ルカによる福音書4章1~13節)
本日より大斎節の主日が始まります。大斎節はキリスト教の歴史の始めより、信仰を強めるための大切な訓練の期節と定められてきました。洗礼を受けてクリスチャンとなった者にとっても、これから洗礼を受けようとする者にとっても、大斎節は大切に守られ、過ごされてきました。この大斎節の第一回目の本日の主日に、私たちはイエスが悪魔から誘惑を受けられた出来事を福音書を通して示されます。
悪魔はイエスに三つの誘惑をします。「神の子なら、この石にパンになるように(あなたは)命じたらどうだ。」と<食べ物>の誘惑をします。また「この国々の一切の権力と繁栄とを・・・もしわたしを拝むなら、みんなあなたのものになる。」と<権力>の誘惑をします。そして「神の子なら、ここから(あなたは)飛び降りたらどうだ。天使たちはあなたを守る。」と<安全>を保障する誘惑をします。イエスは、すべての人を救うという父なる神のみ心を行うために、エルサレムに向い、十字架の出来事へ歩まなければなりませんでした。悪魔がイエスに対して、自分の拠り所を「食べ物」や「権力」、「安全」というものにさせようとする誘惑は、イエスの十字架の出来事の意味とは全く逆のことです。イエスは神のみ心に全てを委ねて十字架につけられ、その十字架の上で、飢え渇き、この世の権力に蹂躙され、命を奪われました。しかしイエスは、十字架の出来事を通して私たちの罪を贖い、私たちを救うために、父なる神のみ心に従って歩まなければならなかったのです。悪魔は、十字架へと歩むイエスの決意と、父なる神のみ心とご計画を、イエスへの誘惑をもって破壊しようとします。
イエスはこの悪魔のすべての誘惑に対して、聖書に記されている神のみ言葉で対抗します。すべてに対して、申命記に記されている神のみ言葉を引用し、そして「~と書いてある」「~と言われている」と、イエスは悪魔に明言します。すると悪魔はイエスを離れました。
大斎節を迎える私たちは、十字架の出来事を仰ぎ見つつ、神のみ言葉をますますの私たちの力としていく生き方に招かれています。