愛を見いだす
（マルコによる福音書７章１～８、１４～１５、２１～２３節）
食事の前に手を洗うことや、また風呂に入って体を清潔に保つことは、衛生的に必要で大切なことです。イエスを敵対視するファリサイ派の人々や律法学者たちは、イエスに向って、「なぜ、あなたの弟子たちは昔の人の言い伝えに従って歩まず、汚れた手で食事をするのですか。」と非難の思いをもって尋ねます。彼らの言う「汚れた手」は、聖書の原文のギリシャ語では、「普通の手」と表現されています。つまり、ファリサイ派の人々や律法学者たちにとっては、「普通の手」は「汚れた手」であり、その普通の手で食事をしたり、外出から帰った普通の体で食事の席についてはならないのです。イエスの弟子たちは決して衛生に関して無頓着ではありませんでした。当時の人々は皆、不衛生からくる病気から身を守ろうとしたのは当然でした。ファリサイ派の人々や律法学者たちがイエスの弟子たちを非難した理由は、衛生的な清潔の問題ではなく、「普通の手」で食べてはならないという、儀式的な清めの問題であり、どこまでも規則や規定の問題でした。
食事は神と共に行う神聖な大切な営みです。その食卓に出される食べ物は神聖なものであり、それを人は神に感謝していただきます。その食事の場は、神と人、人と人との間の愛が現れる「交わり」の場です。そのことを忘れてはならない、というのが神の掟です。しかしファリサイ派の人々や律法学者たちは、その神のみ心よりも、食事についての儀式的なかたち、規則、規定を第一としました。彼らは神の教えを儀式、規則、規定とみなしています。しかしイエスに従う者は、神の教えの中に、神への愛と他者への愛を見いだすのです。