私たちのために
(ヨハネによる福音書20章1~10節)
イエスが復活した出来事を伝える聖書の記事は、二つの側面から語られます。一つは、イエスを葬った墓が空であった、ということを伝える記事です。もう一つは、復活したイエスが人々に現れて出会った、という記事です。本日の復活日に読まれる福音書では、イエスを葬った墓が空であった、という出来事が、ヨハネによる福音書を通して語られます。
イエスの復活を描いた10世紀のイタリアの絵があります。それは、イエスの遺体のない空の墓の絵です。その墓の中には遺体を安置する棺がありますが、もちろん棺は空です。しかしその棺は、生まれた赤ちゃんが横たわる、揺りかごの形をしています。クリスマスに私たちは、布にくるまって飼い葉桶を揺りかごとして、その中に寝ている乳飲み子のイエスを見ました。一昨日の受苦日に私たちは、十字架の上で死んだイエスがその遺体を下ろされ、亜麻布に包まれて墓の中に横たえられたイエスを見ました。そして本日のイースター(復活日)に、私たちは揺りかごの形をしている棺にイエスがおらず、イエスを包んでいた亜麻布だけが置かれている、空の墓を見ます。イエスは生まれた時と死んだ時との2回、布にくるまれ、横たえられます。しかし生まれた時も、死んだ時も、いつまでも布にくるまって、いつまでも横たわってはいません。生まれたイエスは成長し、飼い葉桶の揺りかごから出て、私たちのために、歩み始められます。十字架の上で死んで墓に葬られたイエスは復活し、棺から出て、私たちのために、死では終わらないほんとうの命がある、という希望を約束して下さいました。
イエスは、私たちのためにこの世に生まれ、私たちのために死に、私たちのために復活して下さったのです。